小規模企業共済は中小企業の経営者や個人事業主にとって非常に魅力のある制度です。退職金のない個人事業主にとっての退職金代わりになるため、加入を検討する価値はあるでしょう。
本記事では小規模企業共済に加入する5個のメリットと2個のデメリットについて解説します。メリットだけでなくデメリットもふまえて加入するか検討してみてください。
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する小規模企業向けの退職金制度です。
加入者対象者は小規模企業の経営者や役員、および個人事業主となっています。小規模企業という名称ですが、法人化していない個人事業主も加入可能です。
加入者は全国で約133万人(2017年3月現在)で、小規模企業や個人事業主の退職金制度として利用されています。
月々の掛金は1,000~70,000円まで、500円単位で細かく設定することができます。退職金のない小規模企業経営者や個人事業主にとって非常に助かる制度です。
参考:小規模企業共済
小規模企業共済に加入するメリット
メリット1:掛金が課税対象所得から控除できる(節税になる)
小規模企業共済の掛金は課税対象所得から控除することが可能です。掛金の全額を課税対象所得の控除の対象となるため節税効果が期待できます。
もちろん毎月掛金を支払う必要がありますが、ただ税金を支払うのなら小規模企業に掛け金を支払って自身の退職金充てたほうがいいですよね。毎月退職金を積み立てると同時に節税ができると考えれば非常に魅力のある制度です。
貯金があるとついつい使ってしまう方は、こうした制度を利用して毎月確実に積み立てていったほうがよいかもしれません。自分で貯金するには意志が必要ですが、小規模企業共済に加入して毎月掛金を引き落としにすれば自動で積み立てができます。
メリット2:掛金合計額の最高120%相当額が受け取れる
小規模企業共済の解約手当金は掛金金額の80〜120%相当額を受け取ることができます。掛金納付月数に応じて計算されるため加入年月が短い場合(240ヶ月未満)は元本割れを起こしてしまいますが、上限が最高120%なので加入年月が長いほど受け取れる解約手当金が大きくなります。
上述したように掛金は課税対象所得から控除できるため、節税効果も合わせると100%以上の解約手当金を受け取れる場合は非常に大きなメリットになるでしょう。解約金手当金は掛金納付月数が12ヶ月以上のときに受け取ることができます。
メリット3:65歳以上で任意解約すると退職金扱いになる
小規模企業共済は65歳以上で任意解約、または65歳以上の共同経営者が任意退任をした場合、退職金扱いになります。退職所得になるため、事業所得と比べると税負担が少なくて済むのです。
65歳未満で任意解約した場合は一時所得になりますが(後述)、65歳以上であれば退職金扱いとなるので税金面でかなり助かります。掛金の全額控除が受けられることと退職金扱いになるのは小規模企業共済の大きなメリットです。
メリット4:500円単位で掛金を調整できる
小規模企業共済の掛金は1,000~70,000円の間で自由に設定可能です。さらに500円単位での調整が可能で、途中の掛金変更も可能であるため、自分の資産事情に合わせて細かく設定できます。
最初は少額からスタートし、売上が伸びて余裕が持てるようになったら掛金を増やすようにしたほうがよいでしょう。掛金が全額控除になるとはいえ決して無理しない額で設定してください。
メリット5:貸付制度が利用できる
小規模企業共済では契約者向けの貸付制度を用意しています。
・一般貸付制度
・緊急経営安定貸付け
・傷病災害時貸付け
・福祉対応貸付
・創業転業時、新規事業展開等貸付け
・事業承継貸付け
・廃業準備貸付け
貸付限度額は掛金の納付期間に応じて決まります。たとえば一般貸付制度では掛金の7〜9割の範囲で10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れが可能です。
小規模企業共済のデメリット
デメリット1:元本割れのリスクがある
元本割れのラインが240ヵ月(20年)未満であるかどうかですので、最低でも20年は支払う予定を立てておく必要があります。事業が20年継続できるかを予測するのは難しいため、このラインを超えられるかどうかは非常に悩むところです。
かといって事業が安定して加入するのだと20年のラインを超えるのが先送りになってしまいます。20年以上を見越して加入するなら、月1,000円の掛金から始めるのがよいでしょう。
デメリット2:65歳未満で解約すると一時所得扱いになる
65歳以上で解約した場合は退職金扱いとなりますが、65歳未満で解約すると一時所得扱いになる点に注意です。退職金扱いなら税負担が軽減できますが、一時所得扱いだと税負担の軽減ができません。
掛金は全額控除できるものの、65歳未満で解約手当金を一時所得として受け取った場合、その年は今まで控除されていた分の税負担が一気にきます。
小規模企業共済は65歳以上になってから退職金扱いで受け取ることでメリットが最大限発揮されるため、65歳未満で任意解約する場合は受け取った年の税負担が大きくなることを覚えておいてください。
小規模企業共済の利用は計画的に
小規模企業共済は掛金の全額控除や最高120%の解約手当金など非常に大きなメリットのある制度ですが、元本割れしないようにするには掛金納付月数が20年以上である必要があります。20年以下で解約すると元本割れして損をするため、計画的な利用を考えなければなりません。
リスクを抑えるなら掛金を少なくすればいいわけですが、それだと解約手当金が少なくなるため、元本割れのリスクと計りにかけていくら掛けるべきかをよく考えてみてください。上述したように少額からスタートして資金の余裕をみて徐々に掛金を上げていくのが最も堅実な利用の仕方と言えるでしょう。
おわりに
元本割れを回避するために掛金納付月数が20年以上である必要があるため、小規模企業共済に加入するなら早いにこしたことはないです。掛金は1,000円から設定できるので、今は資金に余裕がなくても毎月1,000円ずつでも掛けていれば、将来掛けていて良かったと思えるでしょう。