法人税と所得税には違いがあるため、個人事業主のままでいるか法人化するかは非常に悩むところです。では具体的に法人税と所得税はどこが違うのでしょうか?
本記事では法人化する前に押さえておきたい法人税の基礎として、法人税と所得税の違いを解説します。税金額が大きく変わってくるため、法人化を考えていない方も法人税について知っておきましょう。
法人税と所得税の違い
税率の違い
法人税と所得税では税率が違います。法人税は比例税率ですが、所得税は超過累進税率です。
【法人税】
・比例税率=所得と税額が比例する税率
《平成30年4月1日以後の開始事業年度以降の税率》
・年800万円以下の部分:15%
(平成31年3月31日までの間に開始する事業年度)
・年800万円以下の部分:19%
・年800万円超の部分:23.2%
中小法人に対しては軽減税率が適用され、年800万円以下の部分にかかる税率は15%となります。年800万円超の部分は23.2%となるのですが、これは固定となるので所得が上がっても変わりません。
【所得税】
・超過累進税率=所得に応じて税率が上がる
《所得税の税率》
・195万円以下:5%
・195万円超、330万円以下:10%(控除額97,500円)
・330万円超、695万円以下:20%(控除額427,500円)
・695万円超、900万円以下:23%(控除額636,000円)
・900万円超、1,800万円以下:33%(控除額1,536,000円)
・1,800万円超、4,000万円以下:40%(控除額2,796,000円)
・4,000万円超:45%(控除額4,796,000円)
所得税は所得が上がるほど税率も上がる仕組みです。法人税では800万円以降は23.2%と固定になりますが、所得税は最高45%まで税率が上がります。
ですので所得が900万円を超えるのであれば、法人化を考えたほうがよいかもしれません。
設立費用・維持費の違い
個人事業主は「開業届」を税務署に提出するだけで開業できますし、開業に際しても維持に関しても費用はかかりません。
対して法人は設立時に費用がかかりますし、年間の維持費もかかります。仮に赤字だったとしても維持費が発生するため、そこは維持費が0円の個人事業主と大きな違いです。
法人の設立費は株式会社であるか合同会社であるかで異なります。合同会社は公証人に払う手数料が不要で、登録免許税も株式会社より安いため6万円から設立できます。
・株式会社の設立費用:21〜25万円ほど
・合同会社の設立費用:6〜10万円ほど
法人に維持費がかかるのは、法人住民税の均等割がかかるからです。資本金によって年間の維持費が異なります。
・資本金1,000万円以下:約7万円
・資本金1,000万円以上:約18万円
所得控除の違い
個人事業主は配偶者控除や扶養控除、医療費控除といった所得控除が受けられます。これらの所得控除を差し引くことで所得税を安く抑えられるため、個人事業主にっては大きな特典です。
それに対し、法人税には所得控除がありません。そもそも所得控除は個人的事情に対して設けられる制度であるため、法人が受けられないのは当然です。
しかし、個人事業主は法人と比べて所得が上がるほど税率が上がりますし、必要経費として認められる範囲も狭いため、どちらが節税に有利であるかは一概に言えません。
法人は赤字でも最低7万円の維持費が必要
上述したように法人には法人住民税の均等割がかかるため、赤字でも最低7万円の維持費が必要です。個人事業主には法人住民税がかからないため、法人のように維持費を払う必要はありません。
これは大きな違いとなるので、いつ法人化するかは所得に応じて考えたほうがよいでしょう。法人は設立費と維持費がかかるため、900万円以下であれば個人事業主のままでもよいかと思います。
所得が900万円を超えるのであれば、法人化を検討する必要があります。法人には所得控除がないものの、必要経費として算入できる範囲が広いため、所得が増えるのであれば必要経費のほうで節税するという考え方をしたほうがよいでしょう。
合同会社なら設立費用を安く抑えられるので、まず合同会社として法人化するのもひとつの選択肢です。
おわりに
法人税と所得税は税率が大きな違いです。法人化するタイミングは難しいですが、安定して900万円以上の収益が見込めるなら法人化を考えてみましょう。