個人事業主が事業で得た利益には所得税がかかります。会社員は確定申告を会社に任せればいいので所得税について考える機会が少ないですが、個人事業主になると自分で確定申告をするので所得税を理解しておかなければなりません。
本記事では今さらすぎて聞けない所得税の基礎を丁寧に解説します。個人事業主になられる方は、この機会に所得税を正しく理解しておきましょう。
所得税とは?
所得税は、個人の所得にかかる税金です。法人の場合は法人税がかかるため、所得税はありません。
所得税は売上額そのままにかかるのではなく、売上から経費を差し引き、さらに所得控除や青色申告特別控除を差し引いた残りに対して課税されます。
平成25年から平成49年までは、所得税に加えて復興特別所得税がかかるのでこちらも覚えておきましょう。
所得税の税率
所得税の税率は、所得額に応じて上昇する超過累進税率を採用しています。
・195万円以下:5%
・195万円超、330万円以下:10%(控除額97,500円)
・330万円超、695万円以下:20%(控除額427,500円)
・695万円超、900万円以下:23%(控除額636,000円)
・900万円超、1,800万円以下:33%(控除額1,536,000円)
・1,800万円超、4,000万円以下:40%(控除額2,796,000円)
・4,000万円超:45%(控除額4,796,000円)
上記の表をご覧頂くと分かるように、所得税の最高税率は45%です。法人税の場合、年800万円を超える部分に対してかかる税率は23.2%ですので、所得額によっては法人化したほうがよいでしょう。
必要経費
所得は売上額から必要経費を差し引いた額となります。必要経費は事業に関する費用が対象になっていて、個人的な出費を経費にすることはできません。
必要経費にできるのは店舗や事務所の地代家賃、光熱費、通信費、広告宣伝費、備品費、事務用品費、外注費などです。自宅兼事務所の場合は、事業で使用している時間に応じて按分すれば家賃の一部を必要経費にできます。
ただし、個人事業主の給与や市県民税・住民税などは経費に算入できません。スーツや靴を仕事のために買ったとしても、私生活での使用と区別しにくいため経費として認められにくいため、除外するのが一般的です。
経費にできない出費は以下の記事でまとめていますので、一度確認しておいてください。
青色申告特別控除
青色申告には青色申告特別控除という最大65万円の控除が受けられる特典があります。白色申告にはない特典で、節税には欠かせない控除です。
青色申告特別控除を受けるには複式簿記で記帳する必要があります。単式簿記の控除額は10万円ですので、最大65万円の控除を受けるなら複式簿記で記帳しましょう。
青色申告特別控除は売上額から経費を差し引いた後に適用されます。その額が65万円より低い場合は、その額が控除額となります。
青色申告特別控除は以下の記事で詳しく解説しています。
所得控除
個人事業主は確定申告の際に所得控除が受けられます。所得控除は個人的事情に対して設けられている制度であるため、法人税には所得控除はありません。
・基礎控除(38万円)
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・寡夫、寡婦控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
所得控除が適用されるのは、所得金額(売上-経費-青色申告特別控除)に対してです。実質的に所得控除を差し引いた額に対して課税されます。
源泉徴収
会社員は毎月の給与から所得税や住民税が差し引くために源泉徴収をしています。個人事業主も報酬から源泉徴収されている場合、確定申告で源泉徴収票の提出が必要です。
源泉徴収票は所得税を先払いしている証明となります。源泉徴収を差し引いて払いすぎた税金があれば還付金として一部が戻ってくるので、非常に重要な書類です。
確定申告では申告書Bに源泉徴収税が記載し、源泉徴収票を添付する必要があるので忘れないようにしましょう。
開業するなら所得税の仕組みを理解しておこう
会社員は会社が確定申告を代わりにしてくれていますが、開業して個人事業主になったら自分で確定申告をしなければなりません。所得税は義務ですので、漏れなく申告する必要があります。
いわば所得税の仕組みを理解することは個人事業主の基本です。所得税には所得控除や青色申告特別控除がありますが、それらの特典を知らないと節税面で損をしてしまいます。
受けられる控除は全部受け、正しく経費を計上すること、これが節税の基本です。
おわりに
所得税の計算はややこしく感じるかもしれませんが、個人事業主であればそれほど難しいものではありません。自分で確定申告をするなら所得税の理解は必須です。
税理士に確定申告を任せるにしても、本記事で解説したような所得税の基本的な仕組みくらいは理解しておきましょう。