開業ために支払った費用であれば「開業費」として処理することができます。では、この開業費はどの範囲まで計上することができるのでしょうか?
本記事では、開業費(開業準備費用)の基本的な考え方と開業費になる費用とならない費用について解説します。開業費は節税に大きく関係してきますので、開業を予定されている方はぜひ覚えてください。
開業費は一般的な経費とは異なる
根本的な考え方として、「開業費は一般的な経費とは異なる」ということをまず理解しておいてください。開業費は「繰延資産」の項目で一旦処理し、5年以内に必要経費として処理をします。
会計上は定額法で5年償却することになっていますが、税法上では任意償却となるのでいつ償却しても構いません。開業から5年以内であれば、開業年に償却してもいいですし、赤字の年に償却することもできます。
最終的に開業費は経費になるわけですが、一般的な経費とは違って上記のような「償却」が絡んでくるのです。「5年以内の償却」は、言い換えれば好きな時に必要経費として落とせるということになります。
開業費になるもの
基本的に開業のために支払った費用であれば開業費にできます。以下のような費用であれば開業費に含めてしまって構いません。
・広告宣伝費
新規開店の告知のために作成したチラシやポスター、インターネット広告の出稿費など
・調査費
出店エリアや競合の調査にかかった費用
・旅費交通費
調査や物件の内覧に行くために支払った交通費
・印鑑、名刺の作成費
事業で使用する印鑑や名刺を作成した費用
・Webサイト作成費用
お店のWebサイト(ホームページ)の作成にかかった費用
・デザイン料
チラシ制作、Webサイト制作などのデザインの外注にかかった費用
・オフィス家具や備品の購入費
事務所に置くオフィス家具や備品、事務用品などの購入費
・打ち合わせ費用
取引先や外注先との打ち合わせにかかった費用(会議室のレンタル料や飲食代など)
開業費にならないもの
上記のような費用であれば開業費に計上できますが、以下のような費用の場合は開業費として計上できません。
・10万円以上
パソコンやプリンタなど、10万円以上の備品は固定資産として計上した後、減価償却を行います
・敷金
物件取得時に支払った敷金は退去時に戻ってくるため開業費にはなりません。
・礼金
礼金は敷金と違って戻ってこない費用ですし、処理は開業費と同じ「繰延資産」(「礼金」などの科目で処理)ですが、開業費に含めることはできません。ただし、20万円以下の礼金であれば、地代家賃や支払手数料として経費にできます。
・販売商品の仕入れ代金
販売する目的で仕入れた商品は売上原価となるため、開業費として計上できません。
・経常費
水道光熱費、通信費、賃借料などの経常費は、開業費として計上できません。
開業費として認められる期限は?
では、いつまでに支払った費用が開業費として認められるのでしょうか?
これに関しては明確な期限は決まっていません。極端に言うなら開業に要した費用であれば何年前のものであろうと開業費にできます。
しかし、10年も前の費用を開業費にすることはないので、「常識の範囲内で」というのが一般的な解釈です。処理し忘れていた開業費用が開業後に出てくることもあると思いますが、1年くらいであれば開業費に計上しても問題ないでしょう。
事業主になるなら基本的な会計と税法の知識を学んでおこう
会計は税理士に任せることもできますが費用がかかります。それに開業前から税理士に任せる方は少ないので、開業費の知識は学んでおいたほうがよいでしょう。
いずれ税理士に任せるとしても、事業主になるなら基本的な会計と税法の知識を学んでおくことをおすすめします。どんぶり勘定だと黒字倒産してしまうこともあるので、経営者は最低限の会計知識は必要です。
バレなきゃいいと思って開業費にできないものを無理に計上してしまうと、税務調査が入ってしまうかもしれません。事業開始初年度から税務調査が入るのは幸先が悪いですし、次年度以降も税務署からのチェックが厳しくなるかもしれないので、絶対に不正はしないようにしましょう。
おわりに
開業費になるのであれば、計上しないのはもったいないです。ただし10万円以上の備品や礼金などは開業費とは別の処理が必要ですので、その点は注意してください。