フランチャイズと暖簾分けは同じようなものと捉えておられる方も多いかと思いますが、同じではありません。両者には明確な違いがあるので、しっかり理解しておきましょう。
そこで本記事では、フランチャイズと暖簾分けの違いと共通点を解説します。ポイントを押さえれば理解するのは簡単です。難しく考えずにお読みいただければと思います。
フランチャイズとは？
フランチャイズは、本部が加盟店に事業のノウハウの提供し、商号・商標の使用許可を与える事業形態を指します。加盟店のオーナーは本部の社員ではなく個人事業主で、いわば本部とはビジネスパートナーの関係です。
加盟店はノウハウや商号・商標の使用権を得する代わりにロイヤリティと呼ばれる対価を支払います。ロイヤリティは商号・商標などの使用料にあたるものです。
ロイヤリティは粗利益の割合に応じて支払う「粗利分配方式」、売上の割合に応じて支払う「売上歩合方式」、毎月固定学を支払う「定額方式」などがあります。どの方式であるかは本部によって異なるので、契約前にしっかり確認しておきましょう。
また、開業前・開業後にサポートを受けられるのもフランチャイズの特徴です。開業前は研修で事業に必要な知識や技術を身につけることができ、開業後は経営のサポートなどをしてもらえます。
ただ、開業後のサポートの内容は本部によって差があるため、契約前によく確認して見極めなければなりません。特に未経験業種での開業では本部からのサポートが非常に重要になってきます。
暖簾分けとは？
暖簾分け（のれんわけ）は、会社やお店で数年働いた従業員に商号の使用許可を与えて独立を認める制度です。江戸時代、商家で長年勤めた奉公人が別家することを暖簾分けと呼んでおり、その仕組みが現代にも受け継がれています。
暖簾分けが認められた従業員は商号の利用が認められるので主家のブランド力を活かすことができ、主家にとっては暖簾分けすることで認知度が高まるのがメリットです。
暖簾分けにおいて主家と別家は契約関係にはなく、フランチャイズのようなロイヤリティの支払いは発生しません。ビジネスパートナーではなく、師弟関係や同じ商号を背負う仲間と解釈すると分かりやすいでしょう。
フランチャイズと暖簾分けの違い
フランチャイズと暖簾分けの大きな違いは、「ロイヤリティが発生するかどうか」です。
フランチャイズの場合は本部と加盟店が契約関係にあるため、加盟店は本部に対してロイヤリティの支払い義務が生じます。本部にとっては自社で築き上げた貴重なノウハウや商号の使用権を与えるのですから、その見返りとしてロイヤリティの支払いを求めるのはビジネスとして当然のことです。
一方、暖簾分けは主家と別家は契約関係になく、ロイヤリティも発生しません。フランチャイズと同じくノウハウの伝授や商号の使用許可が与えられるものの、暖簾分けはビジネス関係ではなく師弟関係に近いためロイヤリティがないのが通常です。
また、フランチャイズでは契約終了後の一定期間、同業種での営業を禁止する「競合避止義務」という契約が盛り込まれていることが多いですが、暖簾分けにはそういった制約はありません。主家の商号を傷つけないように守るべきルールや約束のようなものはあるでしょうけれど、契約を交わすわけではないのでフランチャイズに比べて制限は緩いです。
他には大きな違いがあるとすれば、フランチャイズは短期間での開業が可能で、暖簾分けは数年の修行期間が必要である点でしょう。フランチャイズは数週間で独立できるように研修制度が組まれているため、すぐに開業できます。
対して暖簾分けは数年の修行期間を経てようやく別家となることが認められるため、ある程度長い期間を想定しておかなければなりません。
飲み込みが早ければ早く暖簾分けが認められますが、なかなか暖簾分けを認めてもらえない場合もあります。それに比べればフランチャイズは開業しやすい仕組みであると言えるでしょう。
フランチャイズと暖簾分けの共通点
フランチャイズと暖簾分けに共通しているのは、ノウハウを享受できる点、ブランド力を集客に活かせる点です。フランチャイズではノウハウを享受する対価としてロイヤリティを支払いますが、それを抜きにすれば暖簾分けと変わりはありません。
暖簾分けでも主家のノウハウを伝授してもらった上で独立をするので、その点ではフランチャイズと同じです。ロイヤリティの支払い義務がないという点では暖簾分けのほうがメリットはあります。
ブランド力の使用も同じで、フランチャイズでは対価としてロイヤリティを支払いますが、それを抜きにすれば暖簾分けも同じです。フランチャイズも暖簾分けも本部や主家のブランド力を使って集客できるため、無名の状態から始めるよりも断然有利になります。
ただし、フランチャイズも暖簾分けも本部やどこかの店舗が不祥事を起こしたりすると、他の店舗にも影響が出ます。その点は共通しているリスクと言えるでしょう。
フランチャイズで即開業か、暖簾分けを目指して修行するか
フランチャイズは未経験者でも短期間で開業できるため、その点に魅力を感じる方は多いことでしょう。その反面、あまりに簡単に開業できすぎて不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
暖簾分けはしっかり修行してから開業できるので、技術面での安心感があるのは暖簾分けのほうでしょう。ただし修行期間が長引くこともあるので、開業できるのだろうかという不安があります。
フランチャイズで即開業か、暖簾分けを目指して修行するかは非常に悩むところではありますが、開業までの期間にも着目して比較してみてください。
おわりに
フランチャイズと暖簾分けは共通点がありますが、ロイヤリティの有無と開業までの期間に大きな違いがあります。短期間で開業したい方はフランチャイズが向いているでしょう。
フランチャイズ契約においてロイヤリティは非常に重要な項目ですので、内容をよく確認してから契約するか決めてくださいね。
