予定納税という前払いの納税制度があることをご存知でしょうか? 開業されていてもご存知ないという方は意外と多い制度ですが、通常の確定申告と違って前納制であるため対象となる場合は予定しておかなければなりません。
本記事では予定納税の制度について詳しく解説します。予定納税には還付加算金という利息がつくメリットがありますので、そちらも併せてどのような制度かぜひ知っておいてください。
予定納税とは?
予定納税は、5月15日時点において予定納税基準額(15万円以上)に達している場合、その年の所得税及び復興特別所得税の一部を前もって納付する制度です。予定納税は象となった納税者に書面で通知されるもので、自ら希望できるものではありません。
通常ならば前年分の所得を2月中旬〜3月中旬の確定申告で申告を行った後に納税しますが、予定納税は前納制となっているため納税の期日が早くなります。
予定納税をご存知なかった方は突然通知が来て驚かれることでしょう。しかも前納制で当年の7月と11月の2回に分けて先に所得税を支払わなければならないため、急に所得税を前納で支払えと言われても困りますよね。
しかし、予定納税は義務であり、期日までに支払わないと延滞税が課せられてしまうため、制度を知っていても知らなくても支払わなければなりません。これが予定納税の辛いところです。
予定納税の納税額
前年分の所得金額に対し、下記のいずれにも該当する場合、前年分の申告納税額が予定納税額となります。
・山林所得、退職所得等の分離課税の所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がない
・災害減免法の規定の適用を受けていない
支払いは予定納税基準額の3分の1の金額で、第1期の期日が7月1日から7月31日、第2期の期日が11月1日から11月30日です。上述したように支払期日に遅れると延滞税が課せられてしまいます。
減額申請について
その年の6月30日の時点で所得税と復興特別所得税が予定納税基準額を下回る場合、7月15日までに税務署に申請して承認されれば予定納税額が減額されます。第2期分の予定納税額のみ減額申請する場合は10月31日の現況で見積もり、11月15日までに申請してください。
予定納税の減額申請は、業況不振などで本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに減少すると見込まれる方、廃業・休業・失業をした方、災害・盗難・横領などにより事業用資産や山林に損害を受けた方、医療費控除額が増加する方、住宅借入金等特別控除を受けられる方、寄付金控除を受けられる方、配偶者控除等の所得控除が増加する方が対象となっています。減額の適応には税務署長の承認が必要となるため、申請すれば必ず減額が受けられるわけではありません。
減額申請は以下の「予定納税額の減額申請書」で行います。申請書は税務署で、または国税庁のホームページでフォーマットを入手できます。
参考:[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続 – 国税庁
還付加算金
予定納税には還付加算金という利息がつく仕組みがあります。予定納税はあくまでも見込みで所得税を納税するため、実際の納税額が予定納税した金額より少なかった場合は還付金が受け取れますが、それとは別に還付加算金という利息がつくのです。
還付加算金は年7.3%と特例基準割合のいずれか低い方が適用されます。特例基準割合は以前なら4.3%でしたが、平成28年は2.8%、平成29年は2.7%と下がってきているものの、低金利の時代であることを考えれば悪くはないと言えるでしょう。
収益が減少する見込みである場合、減額申請をするのがよいか還付加算金を選択するのがよいかは迷うところです。収益が減少しても還付金があるので払いすぎるということはないですし、加えて予定納税には還付加算金があるので減額申請しないという手もあります。
ただ、予定納税は前納制となっているため、収益減で予算が厳しいと難しいかもしれません。その年の収益が減少する見込みでも、資産に余裕があるなら還付加算金込みで減額申請するかどうかを考えてみてください。
予定納税を予定しておこう
上述したように予定納税は予定納税基準額(15万円以上)に達している方が対象となります。ご存知ない方も多いこの制度ですが、支払いは義務なので予定納税基準額を超える見込みの方は予定しておいたほうがよいでしょう。
開業や起業したばかりの時は開業費や経費などで納税額が少なくなりますが、売上が伸びてきて納税額が多くなってくると予定納税の対象になる可能性があります。収益が伸びたからといって経費を使いすぎると予定納税の通知が急に来て手元に資金がなくて困ることになりますので、予定納税分の資金を残しておきましょう。
おわりに
予定納税自体を知らなかった、または還付加算金の恩恵があることを知らなかったという方は多いのではないでしょうか? 還付加算金は予定納税をするメリットとなりますので、その時の金利がいくらなのか確認しておくとよいでしょう。